2008年8月1日金曜日

第31回「陰謀を通しての訓練」 使徒23章1-24節

いよいよ「人生の訓練シリーズ」も最終回となりました。最終回のテーマは「陰謀を通しての訓練」です。陰謀と言うと少し大げさかもしれませんが、小さな悪意にさらされてしまうことは誰にでもあることでしょう?しかも悪意ある人々が裁かれず、「悠々と暮らしている」のを見ると、思わず「どうして?」と思ってしまいます。そんな時、私達は、どんな訓練を通らされているのでしょう?

パウロには、もともと一つの「切なる願い」がありました。それは「何とかして、道が開かれて、あなた方のところに行けること」でした。彼はローマに行き、そこにいる兄弟姉妹(クリスチャン)を励まし、強め、自分自身も励ましを受け、ローマにいるより多くの人々に「福音を伝えたかった」のです(ロマ1:9-15)。それはどれもこれも全て良い動機でした。でもなぜか、その道は、妨げられてたのです。

どうしてパウロの願いは妨げられていたのでしょう?私達は「良い動機で願えば、主はかなえてくださり、そうでなければかなえられない」と単純に考えます。確かに聖書には「願っても受けられないのは、悪い動機で願うからです(ヤコ4:3)」と書かれています。でも実際はもっと複雑なのではないでしょうか?というのは、正しい動機で願っても、激しい陰謀にさらされされたり、妨げられてしまうことはあるし、逆に、悪意ある陰謀が、良い結果を生み出すことだってあるのです。

創世記のヨセフを思い出してください。彼は、兄弟によって外国の隊商に売られてしまいました。でも結果的にその陰謀を通して、彼はエジプトの大臣となり、ヤコブの子孫(イスラエル)を救ったのです。後にヨセフは言いました。「あなたがたは、私に悪を計りましたが、神はそれを良いことのための計らいとなさいました。それは今日のようにして多くの人々を生かしておくためでした(創世50:20)」と。

パウロにも似たようなことが起こりました。彼はユダヤ人の悪意によって捕えられ、不正な裁判にかけられ、囚人とされてしまいました。そしてそれ以降も、パウロは様々な悪意と策略に翻弄されますが、不思議なことに、陰謀が激しくなればなるほど、パウロは確実にローマへと導かれていくのでした。言い方を変えれば、福音は、陰謀を通して、ローマへと運ばれ、世界へと広がって行ったのです。

つまりどういうことでしょうか?それは「神様のご計画は、人の悪意を超えて、前進している」「神様は悪意でさえも、ご自身のご計画のための用いることができる」ということです。一時的に「悪者は悠々と暮らしている」様に見えるかもしれません。しかし、そんな中にあっても、主のご計画は着実に進行しているのです。

また神様は、陰謀を通して、私達を訓練されます。陰謀の中で私達は必死に祈る様になります。そして悩みの炉で練り聖められ、謙遜にされ、自分の願いがかなえられても、決して「自分の力でそれをやった」とは言わず、主に栄光を帰するようになります。エルサレムで「勇気を出しなさい、あなたはローマでも」と言われた時のパウロも、自分の無力を痛感し、徹底的に砕かれていた時でした。反対に言えば、砕かれたその時こそが、ローマ行きへの本当の「時」だったのです。

人の悪意や陰謀は放っておきなさい。神様は泥水からも綺麗な花を咲かせることのできるお方です。あなたが自分を見失わなければ、全ては益へと変えられるのです。◆あなたはただ謙遜に、勇気を失わず、神と人とを愛し続けなさい。そしてあなたの主であるイエス・キリストを、どこにおいても立派に証し続けなさい。

神を愛する人々、
すなわち、神のご計画に従って召された人々のためには、
神がすべてのことを働かせて益としてくださることを、
私たちは知っています。
ローマ8章28節